平和について:『鉄砲と釣り鐘』2

ある日、ケンジが学校から帰ると、玄関先に、鉄瓶、火鉢、じいちゃんのクワが積まれたリヤカーがありました。

それを見たケンジは、前にじいちゃんが言っていた「金属供出」だと、ぴんときました。

金属供出とは、あらゆる金属製品を、戦争で使う鉄砲や武器に作り変える為に、各家庭から集めることです。

同時にケンジは、リヤカーの中にブリキのおもちゃがあることに気づきました。

そのおもちゃは、ケンジの父ちゃんが戦争に行く前に買ってくれた、とても大切なものです。

「そのおもちゃ、持って行かないでけろ!!」

ケンジは叫びました。

すると兵隊らしき人が、

「何だ貴様。日本国がアメリカと戦っているときに、協力しないのか!

お前の父親も、歯を食いしばって戦っているんだ。

鍋、釜はもちろん、針一本だって、戦争の役に立てるんだ、

協力しない者は法律違反の罰則があるぞ!」

と、ケンジに向かって怒鳴りつけました。

ケンジは母ちゃんに向かって、

「母ちゃん、あのおもちゃ、父ちゃんからもらった宝物なんだ!持っていかねぇように頼んでけろ!!」

と言いましたが、母ちゃんはうつむいたまま、何も言えませんでした。

兵隊はケンジに近づき、

「その学生服のボタンも金属だな。それも供出しろ!」

と言い、ケンジのボタンを、ブツブツッと引きちぎっていきました。

その夜、ケンジはその出来事が悔しくて悔しくて、布団に顔を埋めて泣きました。

その姿を見たじいちゃんは、ケンジに語りました。

「なぁケンジ。困った次時代になったなぁ。

兵隊さん達は、金属となれば何でも持っていく気だ。

常堅寺のつり鐘が持っていかれるのも、時間の問題だべなぁ。

300年前、4代目のエンイツ和尚の時代、日照りが続いて米が取れず悪い病気が流行って、

災いの無い幸福な世になってほしいと祈り、門崎の人たちが作ったそうだ。

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